2006/11/24

映画『麦の穂をゆらす風/ケン・ローチ』

麦の穂をゆらす風を見てきました。シネカノン系、渋谷のシネ・アミューズ で。

本当に有意義な映画だった。
見ようと思った動機として、北アイルランド問題・IRA等など、何気に耳にするがよくわからない事象に関して、イギリスと関連した表面的な知識はあるものの、なんか深いところまで突っ込むきっかけがなかったので、その辺りをこの映画で知りたい、または知るきっかけになれればなと思っていた。

結果的に自分が知りたいと思っていた事は、1920年のイギリスからの自由(独立)を目指したアイルランド人の戦争について、映像とリンクしたリアリティのある知識としてストックされたと思う(全てを確実なものと思うつもりはないが)。因みに「麦の穂をゆらす風」とはアイルランドの伝統歌(アイリッシュ・トラッド)の『The wind that shakes the barley』でイギリスによる弾圧からの抵抗の意を含んでいるみたいです。

歴史的な事実と共に、この映画から戦争や紛争を通じた普遍的な人の行動を知ることができた。
イギリスからの独立のためにどのような行動をとればよいのか。自分の命を犠牲にしてでも、自分たちの国の事を真剣に考え、自分たちの国がどのような政治体制を取れば最善なのか。イギリスからの名目上自由を獲得した後、多くの要因で自らの信念を固執してしまうために、兄弟関係すらも敵対してしまう事の悲惨さ。

映像的に悲惨なものが多いけど、この映画で伝えたいのはイギリスとアイルランドの単なる一国と一国の歴史上の事実ではなく、イギリスからの自由獲得後のアイルランド国内の大きく2派に別れ、昨日の仲間は明日の敵のような事態に陥ってしまう無政府状態の国民の心理状態の危うさかなと思う。何が正しいか分からないが、イギリスからの長い統治から解放を目指し、自らの信念で国を導こうとする人間達の様々な思いが錯綜する事で衝突してしまう結果を、最終スポットに当てられていたが、それは現在も存在する北アイルランド問題に起因したものなのだと理解した。

アイルランドに行きたくなった。
映像を通じた風景もそうだが、歴史からの興味はさらに訪れる動機を掻き立てる。訪れて色々感じてみたいなと。
純粋に本当に世界中には色々な問題があるんだなと視野が広がる時間でもあった。

こういう意味のある、個人的に本当に有意義と思われる映画をもっと多くの映画館で上映されればいいのにねー。まぁ映画に対して個人差があるのは理解できるが。