2009/10/01

Arabesqu,Hallelujah,Picasso

今朝スペインから帰国した。
旅の感性は後半になるほど成熟する。
今回の旅も後半にエッセンスが詰まっていたように思う。

旅前、何か漠然とした感情を抱きながらアンダルシアを周り始めたのだが、それがマラガ(MALAGA)で明らかになった。

マラガはスペイン南部、地中海に面し、ピカソが生まれて幼少期を過ごした港町。
気候が良く、魚介類を主としたTapasが有名でおいしい。
また、Museo Picasso Malaga(ピカソ美術館・マラガ)は多くの観光客が訪れる。(自身もその一人)
地中海を挟んでアフリカ大陸に向かうフェリーも出ており、アフリカ大陸(モロッコ等)との結びつきが強い。
古くイスラムの領土であった事もあり、名前においてもアラブ=イスラム色が残る町名(イスラムの呼び名はマラカー)となっている。

旅をして思ったが、アンダルシア一帯は、Alが頭に付いている町(これはアラブを意味する)が多い。特に地中海沿岸にそれが象徴されており、リゾートで有名なAlicante、比較的大きな都市であるAlmeriaやジブラルタルの隣にあるAlgeciras等多くはアフリカ大陸と近接する港町だ。もちろん、グラナダのAlhambraもそれにまつわる意。少し脱線。

マラガでの話。
町の中心に40Mを超えるドームを備える大聖堂(カテドラル)とALCAZABAと呼ばれるイスラムを象徴する宮殿が現存する。
そのカテドラルの壮厳たる内部空間に身をおきながら、ゆっくりとこの土地の事を考えた。
カトリシズムにまつわる音楽を聴きたかったが、生憎なかったので、Debussyの2つのアラベスク−アラベスク第1番を聴いた。

アンダルシア地方は、15世紀のレコンキスタ(カトリック勢力の国土回復運動)により、現在に至るまでカトリックを主として文化、建造物が構築されているが、イスラムの文化が細々とマラガを含むアンダルシア地方に残っている。
グラナダのアルハンブラ宮殿もそうだが、カトリックの時代になってからもそのアイデンティティとなるイスラム色の強い建築等を破壊す事なく、実際に使用した。

この地で生まれたピカソはキュビズム、シュールレアリスムの旗手として多くの新しい芸術を生み出した。
彼の生まれ育った上記歴史的背景を有するアンダルシアの地が、彼の芸術に少なからず影響を与えていると思われる。
彼の作品に多く牛が描かれるのも、マラガでの幼少期によく親とともに通った闘牛場での出来事が影響しているのだという。
アルハンブラやALCAZABA等でみた、美しいアラベスク模様を有するイスラム建築の装飾は非常に幾何学的な側面を有し、キュビズムの創出に少なからず影響しているのかも知れない。

このようなイスラムとカトリックの融合の歴史と文化が、現在のこの地に住む人々の食や芸術に影響を与えている事を肌で感じ取れた事が、今回の旅の大きな収穫と考える。