2007/09/09

文化都市六本木

六本木はアートを発信する場となり得るのか。よくこんな事が言われていますが、どうでしょう。
普段丸の内で過ごしている身としては、最近の六本木は気になります。街の開放感という点で。
とかなんとか言ってて、東京ミッドタウンと現在ヒルズの森美術館で開催中のコルビュジエ展に行ってきました。

東京ミッドタウンの中に入るのは実は初めてで、広々とした空間を生かしテラスのスペースも十分に用意され、開放感があるお店(飲食)が多い。

Nirvanaという、かなりロックな店かと思いきや、めっちゃインド料理で結構いけてるお店に入りました。70年代からNYで伝説的(?)なインド料理屋として、愛されてきたお店らしいです。そもそもニルヴァーナという言葉が仏教用語で、涅槃(=理想の境地、完全な状態)を意味するらしく、お店のトレードマークが蓮である事も理解できますね。ランチはビュッフェ形式で味も良く、上品なインド料理を出してくれます。

別のフロアーには、雑貨やインテリアショップがいくつかあり、和を強調したラインナップとなっていました。これらのお店は六本木界隈の最近のコンセプト(日本の文化を発信していく)に合致しているが、物の割には高く感じる価格設定だった。裕福な外国人層を狙っているのでしょうかね。

六本木ヒルズの森美術館で現在開催中の ル・コルビュジエ展にも行ってきたが、内容が相当ボリューミーでよろしかった。かれこれ3時間半くらい居たと思う。
これまで自分が訪れたフランスでの彼の作品やインド・チャンディガールで彼が行った都市計画について、きっちりとしたコンセプトを再考できたのが有意義だった。実際の内部空間も演出されていて、なかなかコストがかかっている展覧会だなと関心した。特にマルセイユのユニテ・ダビタシオン(集合住宅)の空間演出(一つの部屋の間取りを再現)は自分が行ってみたいと思っていた事もありよかった。

2002年に欧州に行った際、コルビュジエの作品に触れる機会が多く、バーゼルからパリに向かう途中にフランス南東部のロンシャンの教会に訪れた。そのロンシャンの教会は現時点でも、自分がこれまでで最も感動した建築となっていて、建築というもので、あれほどまで感動してしまった自分を不思議に思ったくらいだった。何故教会の中の空間で、あれほどまで感動してしまったのか。空間を知り尽くし、考えて考え抜いた建築家だからこそ作り上げる事ができた空間だったのだろうか。おそらくそうなのだろう。

今回の展覧会で得た知識を元に考えた結果、ロンシャンの教会は彼のコンセプチュアルな部分と絵・彫刻等多様な表現方法を有している部分が相まって生まれた産物なのだと思った。イメージし、空間に落とし込む作業ってまさに絵と彫刻だと思うし、そういう意味で設計・施工を経て竣工の瞬間まで彼は綿密に計算できていたのかも知れない。恐らく、それが暗黙的に彼に形成されていたとしても、絵画と彫刻の一流の技法を身につけていない建築家に比べれば、その(イメージを最終段階まで綿密化する能力)差は歴然であると思われる。

ロンシャンの教会に行ってはじめて、建築の本質は内部空間にあると思った。
外観を形成するデザインと内部空間がどれほど相互依存しているのかは自分にはわからないが、建築は目でみるものじゃないと感じた事を記憶している。
建築空間は五感で感じ取るもの。そんな事を当時考えていたからなのか、ロンシャンの教会の写真がほとんどない事に気がついた。おそらく自分の事だから、視覚的にロンシャンの教会を切り取れたとしても、どうせ本質的な建築空間で得た感覚を伝える事ができないと思って、ひねくれていたのだと思う。五感で感じとれるものこそ建築の本質で、視覚的に紙媒体や展覧会でその建築を感じてもそれは本質じゃないと思うから、やっぱり、色々と訪れる事が有意義なんでしょうね。ロンシャンの教会はおすすめですので、フランスに行った際には訪れて下さいませ。

ロンシャンの礼拝堂に向かう道中の風景と、立ち寄ったカフェの写真。ちょっと懐かしかったので。こんな田舎道を上っていった小高い丘にロンシャンの教会があるのです。